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別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
なくしたものと引き換えに
「スザク・・・」
夜の月明かりのせいか、スザクの雰囲気がいつもと違って見えた。それは、スザクも同じで、礼拝堂に訪れたライは、ここの雰囲気と見事に溶け込むほどに神秘的で、月明かりに浮かぶライの姿は、確かにいるのに、消えてしまいそうな幻にも思えるのだが、ライがスザクへと歩み寄ることにより、それは現実にいる存在なのだと理解する。
「えっと、こんな時間に呼び出して、まずは、ごめん。どうしても、君に伝えおきたいことがあって」
正面で向き合うように立ち止まり、無言ライは、スザクの言葉を持つ間、沈黙が流れる。スザクが何を言うつもりなのか確信はあったのだが、本人の口からいざ聞くとなると、その緊張感さえも伝わり、不安と期待を押し寄せる。
「自分でも、可笑しいくらいにどういうわけか、君の事ばかり考えてる。嘘はつけなくなって、正直に気持ちを伝えようと思うんだ。答えは、それからでもいいから、聞いてくれないかな。今の気持ちを」
「ああ・・・」
スザクは目を閉じて、深く息を吸って一息つくと、輝きを秘めた緑の瞳が開き、まっすぐとライを捉える。
「君のパトーナーになりたい。ディバイサーとしてじゃなくても」
直接的な言葉が、ライの耳と心にも届いて、心に渦巻く感情の波に、ライは目を伏せるようにして、
「それは、友達とも仲間とも違う意味なのか?」
「うん、ごめん。困らせてしまってるね。でも、これだけは、伝えておきたかったんだ」
正直に言えば嬉しいのだが、その感情を押し込めて、ライは口にする。
「君の事が・・・・嫌いというわけではない、正直に言えば君と近い感情を持っていることには気づいた。だが、不安なんだ」
その言葉に、驚くように目を瞬かせたスザクへと、視線を見据えてライは、続けた。
「君とこれからも戦場に出て戦い、学園生活を共に過ごす日常があると、此処で僕がそれを決めたとしても、いつ記憶が覚醒して君の前からいなくなってしまうとも限らない。その不安があるからだ。僕のわがままで君をこれ以上巻き込みたくはない。今此処でこうして記憶が戻る前に話せただけでも、僕は満足だ。これは、本音だ。君には、僕よりももっといい相手が見つかるはすだ。だから、これはこの瞬間に覚えておくものだとして、このままでの関係でいよう。スザク」
淡々と話す、静かなライの声が、礼拝堂に響く。真剣な表情であったが、僅かな感情の揺らめきが、瞳に現れていたが、それを隠すようにライは、眼を伏せた。
「大丈夫」
「・・・スザク? 何故?」
「大丈夫だよ。・・・・それくらいで僕の気持ちが揺らぐなら、今此処でこうして君に正面から気持ちを伝えたりはしてないと思うから。それに、初めて会った時から、此処までやってきたように、君の記憶がいつ覚醒するのかは、それはわからない。だけど、それで此処からいなくなったとしたら、僕のほうから探し出してみせるよ」
穏やかに意志の強い瞳を細めて、スザクは、優しく諭すように問いかける。
「探し出す?そんなことが」
「出来るよ。君が僕に後押ししてくれたように、僕も負けずに追いかける。これでも、昔やった遊びで人を見つけるのは、得意なんだ」
「スザク、過去の僕がどういう人間だったのかか知らずに、言うものではない。君が嫌う汚い人間なのかも知れない。その可能性も十分にあるのだぞ?」
「うん。過去の君がどんな奴だったのか、確かに僕も知らないよ。だけどね、大切な人はもう無くしたくないんだ。だから」
そっと手を伸ばして、項垂れたままの白く僅かに細いライの手を重ねるように、握り締めたスザクが、口にした言葉にはっとさせられる。
「――――――――泣かなくても、いいんだよ」
スザクに、指摘されて、ライは、一瞬目を見開いて、思わず頬へと触れた指が濡れて、自分が泣いていたことを知る。
悲しいわけじゃなく、頬を濡らす涙を手で拭う間に、溢れた瞳からまた涙が伝った。
泣きたいわけじゃなくても、涙が溢れるのは、どうしてなのか。
何度も拭うようにして、歪められた曇りのなく澄んだ銀の瞳から涙が零れ、ステンドグラスから差し込む光に反射したその涙の雫を、綺麗だと思いながら、自分でもどうしていいのか困ったように眉を下げたスザクは、握ったままのライの手を引き寄せるようにして、抱きしめた。
息を呑んだ声を、背中越しに聞いてそれから声をかけるように、そっと語りかけた。
「君からもう逃げないって決めたから、ライも僕から逃げないで」
間を置いて、ライの頭が頷いたように動いた。せめてもの返事だろうか。
微かに聞こえる泣き声は、押し殺したようにライの口から僅かにこぼれ、抱きしめた身体から震えて伝わった。
だから、今度は言葉ではなく、力を込めてライを抱きしめる。
それぐらいしか、宥める方法が見つからなかった。せめて、涙の乾くまでの間だけ、スザクは、自分と同じくらい運動能力の高くても、自分よりも華奢なその身体を抱きしめた。
スザクの陽だまりのような優しさが、ライの心に暖かいものを流れ込ませるのだった。
[留め]