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別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
僕たちの関係を縫合する
さわさわとした風が頬を撫でるように流れは、微かに銀の髪を揺れ動かし、木漏れ日を作る木々の葉も擦れるように音を鳴らす。木は其処にある草と花と人の上に重なるようにして、木陰を作っていた。
時々聞こえるのは、虫の鳴き声と風の流れる音だけがその場にあった。
そうした時間の中で、一つ別の音が入り込む。それは、誰かの声。
「ライ・・・?」
ガサゴソっと葉がざわめく音の後で、声が寝そべった耳に自然と届く。
気配に閉じていた瞳がゆっくりと開かれると、夜空の青を映し、視線が動いて、緑の瞳と会う。
「スザク、どうして、此処に?」
「君こそ、こんなところで寝そべって、どうしたんだよ」
足音と草の擦れる音が混じって、スザクの気配が近づいてくる。
「ああ、眠れなかったから、外の空気を吸いにきていた」
「眠れないって、・・・そういや、最近眠たそうにしてたけど、平気なのかい?」
「多少は、睡眠はとってる。だが、夜になると、つい考えてしまうんだ」
「よく、難しい顔してるもんね」
BGMのように聞こえてくる虫の声は、今の季節にはとても静かな空気を音となって、震わせた。
「僕もいいかな?」
スザクへと見上げた時のライの瞳は、反射的に映ったのは、月の灯りのように、綺麗なのだが、当人にはわからないだろう。しばし見ていたせいか、不審げに首をかしげたライに、断る言葉もなくスザクは苦笑しながら、隣に腰を下ろした。
前の時のように、声をかけた時は、身に備わった動きで、一歩距離を置かれたこともあったが、今はすんなりと隣に座ることが出来る。
けれど、踏み出した道筋は、この時のように、隣にあるわけでも、まして、近くにあるわけでもなかった。
日本人でありながら、また日本を変えるために、ブリタニア軍人としての道を、歩んだスザクと、経緯はわからないけれど、ゼロに従えた黒の騎士団と共に、歩み始めたライ。
あの時、ユーフェミアの言葉にあった。それをきっかけに共に作らないかと提案を、ライは、それに否定も賛同もなく、ただ、君は君の選ぶ道を行けっと、言われたのだ。
だが、交わることがあれば、その手を繋ぎ止めたいと思っていた。
こうなる前に、知っていたのな、ライはどうしたのだろう。
自分は、どうしたのだろう。目の前にいるライを拘束して、身柄を確保しておけば、黒の騎士団に帰ることもなくなる。そんな考えが頭を過ぎって、スザクは、かき消すように、首を振った。
ちらりと横目にライを盗み見ると、その瞳は深い夜の空か、それとも、ほんのりと明るく照らす月を見ているのか、視線をたどっても、それはわからないし、見ているとも限らない。
もし、ユフィの願う行政特区日本が成功したとしたら、ライは、今までのままなのだろうか。その時に、記憶を思い出して、何処へ行くとも限らない。いや、ライの姿を見て、気付いた誰かが、迎えに来てしまうとも限らない。
幼い頃に聞いたかぐや姫の話が、不意にスザクの頭によぎった。
あれは、かぐや姫が、竹やぶの中から、見つけられて、優しい老夫婦に育てられ、成長し、綺麗な娘となったかぐや姫に、さまざまな貴族の男から、贈り物を貰ったり、求婚を迫られたりとしても、何不自由のない生活にも、相手にも、それに帝にさえも、彼女は心を動かすことはなく、月を見上げ、言うのだ。゛私は、いつか、月へと帰ります。だから、ライもいつか僕の手の届かない場所に行ってしまうのではないかと、その物語が存在はあっても此処に長くいるとは限らないライと重なる。
そう思うと、胸に広がるのは、哀情だった。
「スザク、何で」
声が聞こえて、隣を見ると、ライが、僅かに驚い顔をした。
そんな表情を見たのは、久し振りで、ライから言われた一言に気づくのが遅れた。
「ーーー泣いているんだ」
「えっ?あ・・・」
その言葉に、頬へと触れると、濡らす水滴をぬぐって、スザクは、自分が泣いていることに気づいた。
「ごめん。泣くつもりなかったんだけど」
ごしごしと、スザクが涙を腕で拭きとる間に、ライの顔が僅かに翳ったことを見落とす。
「・・・・」
スザクへと顔を向けたライの表情は、憂いで、心配しているなのだとわかっていたのだが、揺らいだ瞳が、同じように、悲しんでいるように、映った。
「考えることがあったんだ」
不意に、改めるように、ライが口を開く。
「ゼロが、ユーフェミア皇女と行政特区日本を共に作り上げる事になった時、時間はかかることかもしれないが、それがいい方法だと思ったと同時に、やはり、彼らの居場所は、確かに、あそこにある事を知った。だが、僕はどうだろう。生まれも育ちも此処ではない。だからこそ、此処にいる理由はならないから、僕は僕の過去と向き合う為に、この地を離れることに決めた」
ライは、視線が伏せるのは苦悩してか、これ以上の言葉を言うことを躊躇うように、口を開いて言いかけて言葉を、喉の奥で飲み込む。
記憶が戻って、元の場所へ帰るとなるのは、当然予想もついてたし、今よりももっと前であれば、明るく見送れたかもしれない。
けれど、いや、見送る気持ちは今もあるのだけれど、心がモヤモヤと何かと何かの間に揺れ動いているのはわかっていても、それが何という感情なのか、今のスザクにはわからなかった。
「君が選んだことなら、いいと思うよ」
「ああ。スザクなら、そういうと思った」
スザクが涙を流した時、寂しいと思った感情を読まれた気がして、ライは、驚いた。
だけど、まだ、ゼロにも、話していないこの考えを、どうしてか、スザクには話をしていた。
口に出した言葉は、落ち込んでいるように自分の中で聞こえたのだが、これを言うことによって、スザクが否定しないことを知っているのに、僕は、スザクに、何を求めているのだろうと、ライは考える。
この瞬間、この場所にいる二人であるけれど、お互いの感情は、それぞれにすれ違っていた。
「なぁ、スザク、僕が何も言わず君の前からいなくなってしまった時は、僕の事を忘れてくれないか?」
「それは、どうして」
勝手なことを言っているのは、ライもわかっていた。ミレイに保護を受ける形で、関わった生徒会の面々、彼らの厚意により、ライは学生という身分まで与えられ、記憶探しの最中、巻き込まれた戦闘により、道の自分を知り、そして、それがゼロと関わるきっかけにもなった。それら全てに、後悔はない。ミレイ達に世話になった恩はあったとしても。
「・・・そうだな。自分でも変なことを言った。だけど、今言ったことは、皆には、秘密にしておいてくれないだろうか。まだ、決まってない状態で、余計な情報を与えて、心配をかけてしまいたくはない」
ライの真剣な表情を凝視して、スザクが口を開く。
「ーー君が、・・・うん、わかったよ」
「ありがとう・・・。それと、すまない」
ライの静かな声を聞いて、スザクはそれに答えるように、ゆっくりと横に首を振った。
「だけど、少しだけ、約束してくれないかな」
「約束、なんだ?」
本音は此処に留まってほしいとあるのだけど、自分のわがままでライを困らせるのは性格的に出来ないスザクは、顔を正面に向いて眼を伏せるようにして、静かに口にする。声と共に、ざわざわとした風がスザクの髪を揺らした。
「もし、君がこの地を離れるときが来たら、僕へ最初に聞かせてほしい」
「スザク・・・」
「どうしても、それだけ、約束してくれるかな?。君の友人として」
いつも言うように、スザクがライへと向けたのは、笑顔だった。
「・・・わかった。離れるときが来たら、君に伝えると約束しよう。だが・・・」
約束しようと目を閉じて、再び瞬くように開いた銀の瞳が、スザクを映して、そのまま腕を伸ばすように、差し出したのは、白く細い手の指の中から、小指を立てのをスザクへと向ける。
それが、ライと指を交互に不思議に見やるスザクに、困ったように眉を下げて、
「ナナリーから教わったんだ。約束をするときの、まじないなのだと」
子供の時は、やっていた思うのだが、大きくなるに連れて忘れ去られるものもある。意図に気づいたスザクが、目を細めるように穏やかな表情を浮かべて、手を伸ばし、ライの小指に自分の小指を巻きつけ、約束を唱えた。
片や、特派の軍人と、ゼロの配下、互いに敵同士の関係になったとはいえ、友人であることも、言葉にならない思いが胸の奥に互いに存在しているとしても、それを変える術はなかった。
今できることは、小さな約束をして、繋いでおくことだけだった。
それが、叶うか叶わないかは、この先の未来にある。
[留め]