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別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
確かなものを手に入れたくなる冬
街は、イルミネーションの明かりで賑わう中で、コートを着こんだ少年は、何処までも吸い込まれそうな綺麗な銀の瞳は瞬くようにして見上げていた。
左右に行きかう人と音に流されることなく、ただ立っているというだけで彼の存在が切り離されたような錯覚を見せる。それは、人を寄せ付けない神秘的な雰囲気がそうさせるのか、あるいは、幻影のように触れれば消えてしまいそうな事に躊躇いがあるのか、誰も声をかけることは無いものの、それでも、存在を無視できないらしくちらちらと向ける視線を、気にかける様子もなく、ライは空を仰ぐ。
身に冷たさがしみこみ、白い息がはっきりと見える冬の季節となっても、ライの記憶は一向に戻る気配がなかった。
今ある現状に不満があるわけではないけれど、それでも時折頭痛を覚えたり、悪夢にうなされることはあるくらいで、それが自らの記憶と関係するものだと知ってはいても、明確なことは何もわからないのだ。
ギアスのやり方は多少覚えていても、ちぐはぐな記憶というのは、不安に思うと同時に考えてしまう時間が増える。
前以上に、人を遠ざけるような事も表情が強張っていたことも今は落ち着いているのは、知り合った人たちのおかげでもあるのだろう。
それでも、人の役に立つことは出来ても、誰かと一緒になって楽しむというのは、まだ不慣れなままでいる。
それは、楽しそうな周りの雰囲気に溶け込むことなく、ライだけが、どこか遠くの世界を見ているように感じてしまうのは、興味がないというよりもどこかで割り切っているのかもしれない。
まだライには、特別な色というのは、見えていない。
灰色の見える世界に少しずつ色があることを、ライ本人が気づいていないだけなのかもしれなかった。
「ライ?」
見上げた視線から、後ろへと振り返るように見ると、対照的な色をもったスザクが立っていた。
そういえばとライは思った。
誰かに声をかけるのではなく、いつも誰かから声をかけられてる気がした。
友好的な態度が悪いわけではなく、ただ自分の中に入り込むことを警戒していたのかもしれない。
既にそこから距離をとろうとしていたけれど、今は近くで話せるまでになった。
無意識に人が近づいた時に見せた一歩後ろにひくという動作もなく、近づいてきたスザクから避けることもなくなっていたのは、ライには不思議だった。
「ぼーっとしてたようだけど、何か考え事でもしてたのかい?」
「・・・スザク、君はどうして」
「えっ? ああ、遠くに君を見かけた気がして、追いかけてみたらやっぱりいたからね。僕はその、買い物帰りに」
袋へと視線を向けたライに気づいて、スザクは、袋を上げる仕草をして笑った。
買出しには、スザクにも何度か付き合ったことがある。 その理由を知っているライは、それ以上聞くことはなかったのだが、
「君も買い物の途中だった?」
「? ああ・・・、ミレイさんに頼まれた品物を受け取りに来ただけだ」
「頼まれた・・・ああ、もうそろそろクリスマスパーティーに向けての準備の途中だったね」
「君は参加するのか?」
「勿論、参加するよ。あ、ライは、クリスマスの事は覚えてる?」
それに、首を振ったライは、
「いや、ミレイさんから聞いた」
「じゃあ、初めてでもあるわけだし、皆で楽しめるといいね」
「そう、だな」
どこか浮かないライの表情に気づく前に、ふわりと冷たい風が吹いた。
一緒に帰ろうか、途中まで送るよ、ライに断る言葉を待たずにスザクは歩き始めてから、数秒。
「あ、買い忘れのものがあるから、ちょっと此処で待っててね」
「ああ」
記憶がない分覚えることは増える。
初めのころよりは学園に戻る道もライの記憶には残っているから迷う心配もないのだが、何故一緒に帰る必要があるのかと理由を探すが、ライには見つからなかった。
視界にふと、灰色の世界に白が映り込む。
一瞬見間違えかとライが目を瞬く間に、一つまた一つと落ちゆく白、見上げるとそれはいくつもいくつも空から降ってきた雪だった。
雨のように地上へと降り、積もることなく触れると、溶けていく。
ライの手のひらに落ちた雪さえも。
雪が降ってきたと同時に、寒さも増した気がして、体をちぢ込ませるようコートに身を寄せると、
「はい」
視線を上げた先にスザクがいて、ライのほうへと手袋と一つの缶を重ねて差し出していた。
それらを目にしたライは、問いかけるように視線を上げると、
「君は持っていないかと思って、良かったら使ってくれると嬉しいな」
ライが断るだろうと思いながらも、スザクは、あえて口にすると、
「いいのか?」
「うん」
「・・・・ありがとう」
スザクの笑みに断るすべも無く、ライはそう言って、受け取った手袋と缶は温かかった。
缶のぬくもりが手袋へと伝わったみたいに。
買い忘れたものがあると聞いたのだが、どういうわけかスザクは先ほどの袋以外に増えた物はない。
「缶は熱いから、注意して。あ、ライは熱いのは平気だった?」
「ああ」
「それなら良かった。とりあえず、ベンチで少し休憩しようか?」
「?何故だ」
「暖まってからの方がいいと思って。僕も買ってきたんだ」
スザクの着ているコートのポケットから同じように缶を見せて、ベンチへと移動をはじめた。
スザクに続いて、ライもベンチに腰掛けると、缶コーヒーを飲んだ。
熱を含んだ液体が体の中に流れ込むと、身体にも熱がともったようになる。不思議と先ほどの不安や憂いさえも溶かされていくような錯覚を覚えたのは、缶のおかげなのだろうか、それともスザクの優しさなのだろうか、ライはスザクへと一瞥すると、視線を向けて笑い返される。
「何故・・・」
今日は強引に帰ろうとしたのかと問いかけるよりも、
「ライは、雪見るのは、初めて?」
「覚えてはない。だが、知っている光景はある気がする」
「記憶のどこかに、雪と関係する出来事があったかもしれないね」
「買い物帰りなのだろう。僕に付き合わず、まっすぐ帰ればよかったんじゃないか」
そういうつもりではなかったのたが、ライの口調は突き放すような言い方になってしまった。
「えっ、ああ、一人にして欲しかった?」
「そういう意味ではない」
「うーん、確かに、ライはもう道に迷う心配はないのは知っているよ」
「なら」
「けどね、一人しておきたくなかったからかな。・・・声をかける前も考え事をしていたようだけど、それがライの意識が此処ではないどこかに向いてるようで、変かも知れないけど、あのまま消えてしまいそうだったから」
「・・・皆に黙ったまま、いなくはならない」
「そう、なんだよね。でも、僕が声をかけるまではそんな雰囲気があったから、不安だったのかな。思わず声をかけたんだ」
「・・・・」
知らず表情に出ていたのかと視線を伏せてライは思う。 自分に一体何が出来るのかとか、何が残せるのかとか、記憶のない分、無意識に何かを埋めようとしている自分に気づいて、可笑しいことではないけれど自分の弱さに気づいて、知られたくなくとも赤の他人には気づかれなくとも、ミレイやスザク、ライト知り合った生徒会の皆は、ライの気づかなかった答えを引き出す。その弱さも強さも含めて。
「大丈夫だ。過去を知りたい思いはまだあっても、この地から離れる時が来たら、黙ったままいなくはならない」
今いえる精一杯の気持ちを、ライは言葉で表現するのだった。スザクに伝わったのかは、わからなくとも、今受け入れられてるとこの現状が今ライのいる場所なのだから。
[留め]