こころの還る場所

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こころの還る場所



何処かから、子供の啜り泣き声が聞こえた。

　薄汚れた身体をした、あてもなく彷徨うその子供は、一人きりで泣いている。

　あれは・・・・私だ。

　薄く目を見開き、瞬きを繰り返す。
　目を開くままに上半身をベットからきだるそうに起こすと、明け方前の薄暗い部屋が視界に入る。
　椅子とある程度の家具と、ひどく殺風景な部屋であるなと見渡しながらも、不思議と落ち着いた感覚がした。

　何故だろうか。

　そう思って隣を振り返ると、長い睫の下綺麗な宝石のように輝く青灰の瞳を隠した、人形じみた端麗な容姿ながら、あどけなさの残る細身の男が目に飛び込んできた。

　起きているときは、そう見えないというのに、無防備に寝顔を見せているそれは子供となんら変わりない気がして、私は唇に笑みを刻む。

　ああ、そうか。この男が傍にいるせいで、私は忘れていたはずの人間じみた安心感を思い出そうとしていることに笑ったのもあった。

　枕の上に散らばる糸のような細くも、柔らかな髪を手櫛するように指を差し入れて梳かす。
　私の長い髪と同じであるにも関わらず、どういうわけかライの髪は触り心地良く感じられ、何度も手を伸ばしてしまうのだ。


続く