声の色を覚えてる？

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失恋少女、神楽耶視点の
神楽耶×ライです。
お話は、続きからになります。

声の色を覚えてる？



青月の夜。
苦渋の末、神楽耶は立場を選んだ

　神楽耶は、満月の明るい夜の和室で、就寝時間を迎えていた。
　美肌の健康でもあるし適度な睡眠は誰しも与えるべき必要なものであったからだ。
　例え、当主としてはお飾りにしても、ひと時の学園生活は神楽耶にとっては幸せなものだった。

　鏡台の前で長く黒い髪をとかして、いつからか一人きりとなるのが当たり前となってしまった一室を振り返る。
　そこには一人分の布団が敷いてあり、寝付けるまでは傍にいた母の姿も、褒めてくれる父の姿も、家族と呼べるものは程遠いものになってしまった今。
　常に警護と身の回りを世話をする人がいる分、恵まれた環境である事は自覚はしてあるけれど、女としての幸せは望める間もなく、一人でいる時間はこどくに感じた。

　後ろ向きになる考えを目を瞑ったまま振り切るように首を横に振って、そうしてから開いた瞳は強い意思をもった輝きを取り戻していた。
　今でも不安や恐怖はないとは言えないけれど、日本という領土を守るために戦うものの存在がいることを思い出して、

　まっすぐと見つめる先には、自分がいた。
　皆の前なら気丈に振舞えるけれど、これが彼女の素の表情であると寂しげな少女の表情が映るのだ。


「皆が戦っている中で、私一人が弱音を見せてはならない、そう決めたのでしょう？」


　鏡に向けて自分に問いかける。　暗示をかけるように。
　夢の中では、願望が出るままに自由に普通の少女として生きられた。
　別れた筈のライがいつものように自分を迎え、日本の代表としての立場ではなく、ただ一人の女の子として接してくれる幸せに幸福感を覚えて笑顔になるのだけど、現実の神楽耶は枕を涙にぬらしていたのだった。


「ライ、どうして？」


　生きているだけ、別れても辛くはなく、学園での思い出の残るだけで十分だったけれど、ライが姿を消したと聞いた日から、ライの夢をよく見るのだ。

　学園にはライがいる。それだけで例え会えなくても振り返ることは出来たのに、ライがいなくなった今、彼との接点するものは、もはや思い出しか残らなかった。

　どんな声で喋っていたか、どんな風に笑っていたのか、記憶の中には覚えているけれど、いつからかそれが色あせていくのだ。
　どんなに焦がれていたとしても、忘れないでいようとしても。
　ライが生きているのか死んでしまったのかもわからぬ不安を抱えて神楽耶は眠りにつく。

　ライとの優しい夢を見ながら。



[留め]