----LC----- ライ関連
----LC小説---- BL小説
----LC小説Ⅱ---- BL小説
----小説以外---- その他
別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
団月の幸福
「ライ!。こっちだよ」
セシルからの連絡を受けて特派のヘッドトレラーの場所へと行ってみると、浴衣姿のスザクが其処で待っていた。
訳かわからず首をかしげたライに、スザクは小さく笑うようにして、ライの手を掴むといつもの口調で言った。
「行こうか」
スザクに手を引かれて連れて行かれるようにヘッドトレーラーの中へと入ると、其処にスザクと色違いの浴衣が畳んでテーブルに置かれてあった。
いつもなら電気がついているはずなのに、薄暗い中で、いるはずのロイドとセシルの姿も見当たらないことにも疑問がわく。
「着替えが終わったら、外に来てね。待ってるから」
畳んだ浴衣を両手でライに手渡しながら、スザクは笑う。その意味と仕事ではなかったのと言うように問いかけるライの視線に気づいて、スザクは答える。
「今日はね、仕事とは違うけど、君も楽しめる夜になると思うよ」
「?」
また後でと言う様に軽く手を上げてスザクは外へと出て行ってしまった。
残されたライは渡された藍色の浴衣を見つめる。
とりあえず、制服から浴衣に着替えなおして、外へと出ていったものの、待っているはずのスザクの姿が近くに見当たらない。
あるのは、夜の中に響く涼しげな虫の声だけだと思っていたのだが、耳を澄ますと風に混じって人の声が聞こえてくる。裏のほうから。
声を辿るようにライはヘットトレーラーの裏へとまわると、少し離れた場所でベンチに腰掛けて空を見上げるスザクを見つけた。
其処には、セシルとロイドの姿もあった。スザクも浴衣だったように、セシルとロイドが浴衣姿ではなく、いつもの服だった。
「あら、ライ君。着替えてきたのね。いらっしゃい」
「セシルさん」
近づいたライに気づいたのは、セシルで、その声に反応するようにスザクとロイドの顔がこちらへと向けられる。
「やぁ」
「こんばんわ、ロイドさん。ところで、これは一体」
それにロイドではなく、スザクが答える。
「月見だよ。君は知ってるかな?。月を眺める場所を見つけて、薄を飾り、月見団子・栗・里芋などをお皿に持って今日みたいな満月を鑑賞するんだ。日本の中にもその風習があって、豊作を祈る事もあるけれど、昔は詩歌を謡いながらその情緒を楽しむというのもあったらしいよ」
「月見・・・?」
スザクから空へと視線を向けると、満月が確かに其処にあった。普段意識してみてるわけではないけれど、それでも一層綺麗に見えてしまうのは、ゆとりのある気持ちのせいだろうか。月を見上げたライへと、スザクが声をかけて。
「うん、君も此処に並んで見てみる?」
座ったベンチに横へとずらすようにして移動したスザクが、其処に空いた席をライへと示す。
夜空にその存在を浮き立たせ丸い月が、静かな光を地上へと向け、目に見える明るさをもたらす。
太陽のような強い光ではないけれど、其処には惹き付ける様な不思議な魔力を秘めているようだ。
ついと視線がスザクの持つ紙コップへと移る。湯気が浮き立ち、微かだが甘い香りがライの鼻を掠めたからだった。
「それは・・・?」
ライの見つめた視線の先に気づいて、答えるよりもお盆を抱えた両手がライの前に差し出される。
その手を辿ると、にっこりと微笑むセシルがいた。
「はい。貴方の分もあるわよ。どうぞ」
お盆の上にはスザクの持つのと同じ紙コップに白濁液体が入っていた。其処から先ほど微かにかいだ匂いと同じものが其処にある。
戸惑うように問いかけるライの視線がセシルを見上げるが、意図を読んだのか笑って答えた。
「ああ、これ、甘酒よ」
「甘酒?」
聞きなれない単語に復唱するように呟いたライに、セシルが続けて、
「そう、甘酒。といっても、アルコールは普通のお酒よりはないから、安心して飲んでも大丈夫よ」
「甘酒は学生でも飲んでも許される飲み物だから、君が飲んでも罰せられる心配はないから安心していいよ。ただし、原料によっては、お酒の弱い未成年が大量に飲むと、酔うこともあるから、それに注意すること。それだけだよ」
後ろからスザクの声がかかる。せっかく、用意してくれた物を断る積もりもなく、ライは、ようやくセシルから紙コップを受け取ると、
「ありがとうございます」
「どういたしまして。後でお料理も用意するから、二人で食べてね」
黒塗りの丸いお盆は見た事のない日本のものか、それを両手に抱え込むようにして、セシルはその場を去る。
受け取った甘酒を寄せて一口含んでみると、甘い匂いに混じって、微かだが酒の匂いが香りそれと同じ味が口に広がった。
なんとも不思議な味だった。まずいというものではなかったが、飲みなれないせいか甘さと酒のほうに気をとられてしまい、おいしいとも言えなかった。
表情にそれが僅かに見えたせいか、スザクが横で小さく笑う声が聞こえ、見つめるとスザクは満月を見上げていた。
「薄は残念ながら時間がなくて手に入らなかったけど、こうして綺麗な満月を眺める時間を持てるのは、あんまりなかったから、懐かしいな」
「スザクの子供頃にも、月見をしたことがあったのか?」
「うん、今と違って、傍に人はいなかったけど、静かな夜だったのは同じかな」
家族と見ることはなかったのか、それはルルーシュやナナリーと出会う前の話なのか、そもそもそれを深く聞いてもよいのか、なんと言えばいいのかわからず、満月を映すこともなく視線を伏せて口を閉ざすライに、困ったような笑いを含めてスザクが口を開く。
「また、難しい顔をしてるね、甘酒、口に合わなかった?」
「・・・一口しかまだ口をつけてないから、なんともいえない」
甘酒が原因ではないのだが、これ以上スザクに気を遣わせるのも躊躇いがあって、首を振ってそう言った。口にした言葉は、嘘ではなかった。
ライの持った紙コップに、今の気持ちのようにゆらゆらと揺らめく月が浮かぶ。
何回かスザクと話をし、その間に甘酒を少しずつ飲み干していく。熱さを持った液体を体内へと流し込んでいくと、熱が移った様に身体を温める。それは、熱のせいか、それとも、甘酒に微量に混ぜられたお酒のせいか、ライの白い横顔にうっすらと赤みが差す。
襟元から覗く首筋はしっとりと汗を含んで、溜息のように唇からこぼれた吐息が妙に色っぽく見える。
隣にそれに免疫のない女の子もしくは、ライを好きな子がいるとしたら、どきりとさせられるほどだろう。
そんな艶ぽさを微塵も感じず、ライの後ろではセシルとロイドの賑やかな声がスザクのほうまで届いた。
「ロイドさん。私の手料理ぜんぜん手をつけてないじゃないですか!」
「僕はプリンの方が食べたかったんだよ」
「そんなの、いつも食べてるじゃないですか」
「いつも食べる味の方がいいじゃない」
「私のは食せないというつもりじゃないですよね?」
にっこりと怒ったまま微笑むセシルに、恐怖は感じないのか、とぼけたようにロイドが口にしたのは、
「う~ん。プリンを大量に取ればそれで御腹膨れる事になるからね」
「ロイドさん?」
騒がしい二人のやり取りを見た後で、スザクと目を合わせてどちらかともなく笑いあう。
戦いからも離れた静かな夜に満月が照らすように地上に明かりを灯す中で、虫の声は音楽隊のように一つ一つと音が重なり、広がっていった。
「また、こうして月見が出来たらいいね」
何を思ってか願うように呟いたスザクへと、同じように月を眺めたライが頷いた。
「ああ、そうだな」
「戦いもなく平和な世界で」
「その時は、学園のイベントでミレイさんが何か考え付くかもしれないな。賑やかなものになりそうだな」
「そうだね。皆と、それから」
視線がライへと向けられ、その緑の瞳が優しく細められる。
「君も含めて、ね」
僅かにライの目が見開いたのは、いつの間にかベンチへと着いたライの片手に、スザクの手が重なったからだろうか。それが、握るようにライの手を捕らえたまま、唇を重ねたせいか、頬が熱い。
それを隠すかのように、伏せった銀の瞳が、揺らいだ。その瞳を見て黙笑した、スザクは、
「楽しいものになるんじゃないかな」
かすれたスザクの声がライの耳朶に触れた。囁くように風に乗って虫の鳴く音にまぎれる。
視界が少しぼやけたように一瞬見えるのは、酔ったせいなのだろうか。鼓動がどくどくと耳にまで届くくらいに高鳴るのは、甘酒に移った熱のせいなのだろうか。理解しきれていないけれど、体が可笑しいことだけは理解できた。
セシル達はこちらの様子には気づいていない事に、ほっとしつつ、揺らいだ瞳が嘘のように正気の意思を取り戻した瞳で、スザクを見ると、押し返すようにスザクの肩に手をつけた。持っていた紙コップはベンチに置いて。
けれど、一瞬だけきょとんとした顔のスザクが、繋いだままのもう片方の手を手繰り寄せてライを抱き込む。
ベンチに置いた紙コップに残った甘酒が地面にこぼれて広がることにも、周囲の目を気にする暇もなく、塞がれた口端からライの言葉を飲み込まれ、吐息が僅かにこぼれる。顎を捉えられた為に横に顔を向けることも許されなかった。
「んん・・・っ!」
息苦しさと言い返す言葉が鼻にかかった声となり、自分の普段と違う甘さの含んだ声を耳にして、恥ずかしさと悔しさに頬が火照る。僅かに隙をついてスザクから口を離したライは、顔を背けた先に、セシルとロイドの姿が驚いたようにこちらを見ていた。
こういったことに免疫はないらしく、気まずく逸らした視線がスザクを視界に捕らえると、憤りを残した視線で見つめ返して
「スザク・・・」
吐息を含んだかすれ出た言葉さえ気にならず、怒りを込めた呼び声に、
「飲みすぎたのかな。頬赤いよ?」
と気にした様子もなく、ライの頬を伸ばした手の甲で撫でる。
それだけの事なのに、怒りの気持ちが静まるのは、一人で怒っても馬鹿らしいと思ったのか、この場は無駄と悟ったのか、ライの口から溜息がこぼれる。
「甘酒、代わり持ってこようか?」
地面で残りの甘酒が全て流れてしまった。それは、スザクの責任でもあるのだが、平然とセシル達の方へと振り返り、
「セシルさん、代わりありますか? できれば紙コップも新しいものを二つお願いしたいんですけど。地面にこぼしてしまったので」
「え?ああ、ええ。今持ってくるわね」
頬を染めたセシルが我に返って、そそくさと紙コップを用意しに行くと、それと引き換えにロイドが近寄ってきた。
「んふっふっ~、スザク君、大胆なことをするんだね~」
「そうですか?」
恋人の関係なのだと知らないはずのロイドが、あれを見ても、驚かないことにライは問いかける。
「ロイドさんは、どうして驚かないんですか?」
「うん。君達の事知ってるからね。そんなに驚かなかった。それに、知ったことで、君達がディバイサーなのは変わらないからね~。関係のないことだけど」
前のめりにロイドが二人の間に入り込んで、こういった。
「セシル君には刺激強すぎるから、控えるようにね」
「・・・ははっ」
「笑い事じゃない。スザク」
「ごめん」
二人を見て、ロイドが元の姿勢へと戻ると、ライのほうへと向けて、
「それから、君はあんまり周りを挑発しないようにね。気をつけないと」
「はい?」
「無意識だからね、君の場合」
「どういうことだ? スザク」
困ったように笑うだけでスザクは、答えてはくれなかった。それに、困惑するライを面白そうに見て、ロイドがその場から去ると、それから妙にギクシャクしたセシルがやってきて、紙コップを受け取ったものの、甘酒を半分ほど、口の中へと流し込んだ。
酔っている事にすら気づかず、ライの瞳が熱を含んでトロンと下がる。
甘酒に艶づいた口元が月光に照らされ、怪しく映る。浴衣も含めて、色気をもたらすライを出来るだけ視界に入れないよう、今度は理性で押し込んだスザクは、困った恋人の挑発に溜息を吐くしかないのだった。
[留め]