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別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
桜花の春便り 前編
ふぅっと扉の前で小さく息をつく。
姿勢を正すようにしてノネットは、扉を叩いた。
「はい」
開いた扉に銀色の柔らかな髪を見つけ、隠すように後ろに手を回したまま
「私だ。入るぞ」
「あ、はい」
約束事でもなく訊ねてきたノネットに、少し意外そうな顔を見せる。それもそのはず、最近話すことはあるのだけど、その前に特別であるし元は彼女の屋敷内なのだから、会いに来てもおかしなことではなかった。
ライの部屋は、生活観が感じられないほど物が極端に少ないとわかるほど、あまり物を使わない。
ノネットが用意したものを除けば。
ライは最低限のものを所持していればいい事で、それ以上を望んではいなから、増えるとしても他人から貰ったものぐらいだろう。
それでも、今までの生活で見ても、客室と同じで殺風景なことに変わりないのだけど。
読書中だったわけでも、チェスに興じてるわけでもなく、ライは椅子に腰掛けていた。
その一挙一動が気品を感じられるほどに優雅で、密かに騒いでる使用人達の気持ちもわかるもの。
「ノネットさん」
部屋に入ったまま、何故か押し黙ってしまったノネットの視線の先を辿ると、山済みにされたプレゼントがあった。
「随分と、届いてるな」
「はい。朝、使用人の方々が僕宛にと部屋に運んできたもので」
「私からと?」
「いえ、ノネットさんの名前は出ていませんでした」
それもそのはず、ノネットが贈り物を届けろとは言ってはいないのだから、あるとすれば屋敷に来た後で知り合った者達からだろう。
ライの誕生日が近いと言っただけのことで、まさかプレゼントを贈ってくるとは思わなかったが、それほどライの事を気に入ってるのかが伺える。
「山済みのプレゼントを目にして、お前はどう思った?」
悪戯を浮かべるように目を細めて、ノネットが問いかける。それに、ライは真剣な顔で答えるのだが、
「僕が此処へと来た当初、ノネットさんが日用品を用意してくれたのは覚えていますけれど、今の生活の中で困るほどではないので、それを抜きに考えても、何故かノネットさんではなく僕宛と明記されてますから、理由は見当もつきません」
「お祝い事があると思うのが普通じゃないか」
「祝い事?」
ノネット経由で何かお祝い事でもあったのかと目を瞬かせるライに、ノネットは笑いかける。
「言っておくが、祝いというのはお前の事だ。ライ、お誕生日おめでとう!」
ノネットが差し出した花束に、ライは受け取ったまま目を瞬かす。
「誕生、日?」
「ああ、お前の誕生日だろ」
ある程度の記憶は回復しているけれど、自分の出生日までは明確に覚えていなかった。
ライのいた時代に誕生を祝う風習がなかったのか、それとも誰かに祝われたことがないのかその辺もはっきりとしてはいない。
「僕の誕生日は」
「私はね、本当の誕生日を覚えてなくてもいいんだと思っている」
過去を問うとどうしても恐怖と悲しみの強い記憶を思い起こさせ、表情にも影を落とすライには、忘れ去って欲しいわけではなかったが、できれば悩むばかりでなく笑顔をもっと見せて欲しいと思うのが、ノネットの願いだった。
「皆やっぱり生まれた日があるだろう。お前の場合、まだそれが不明なだけで、まだ祝いの席も用意してなかったから、この日を祝おうと、私が決めたのだ」
ライの綺麗な瞳を覗き込むのは、優しげに細めるノネットだった。
後半へ続く