コードギアスLostcolors、美人のライ受け絶愛プログ。まったり自己満足で書いております。
★ カテゴリー
カテゴリー別に分かれていて、下に表示されるようになっています。
----LC----- ライ関連
----LC小説---- BL小説
----LC小説Ⅱ---- BL小説
----小説以外---- その他
----LC----- ライ関連
----LC小説---- BL小説
----LC小説Ⅱ---- BL小説
----小説以外---- その他
★ プロフィール
HN:
ナッキー観音
HP:
性別:
女性
趣味:
BLゲーム/男主夢小説/小説書き
自己紹介:
(女性主権のBL編)(BL編)ライ・受ラブ同盟
別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
★ お気に入り
★2009/08/22 (Sat)
憂鬱なみだ、星影浄化
真夜中、部屋の主はすぅすぅと小さな寝息を立てる中、ガチャリと開いたのは窓から、風が入り込んでカーテンをふわりと舞い上げる。
風の冷たさに肌に触れ、ベットの中で眠るライの柔らかな髪を揺らすことで、身じろぐと、不意にベットの傍らにいるはずのない人影が姿を現す。
ライと呟きながら伸ばした手は向こうが透けて見えるほど透明なのだが、人の手となった形だけは変わらず、ライに触れようとする。
温もりではなくサラリと撫でる風のような空気感に、ライの意識は夢から浮上し、現実へと戻った意識で薄く目を開いてから、瞬くように瞼を持ち上げていく。
ぼやけた視界に人影のようなものが入って、それから人影の顔が急接近した為に、ふわりと揺れる長い髪、女性であると認識したと同時に覚醒した。
驚いたように目を開いてライは凝視していると、ベットの上にいる人物は何故か可笑しそうにくすくすと笑いをこぼしていた。
外はまだ夜だとわかるとおり、室内はカーテンに仕切られて薄暗く光もないのだが、閉めたはずの窓から風が入り込んでいるし、何より驚いたのはベットの上に浮かぶようにいる女性の姿だった。
以前は人であるとわかる形で目に見えるのだが、生きている人間にはあるまじき彼女の肌や服が背中越しの風景を透けて見せるのだ。
彼女事、ユーフェミアは知り合いではあるけれど、それも死ぬ前の話であるし、此処にいるのは不自然に思った。
「ユーフェミア皇女殿下!?、何故此処に?」
「ユフィで構いませんよ。ライ。それと、また敬語に戻ってます」
生きていた頃と変わりない柔らかな笑顔を向けて、言ってきた。
「あ、ああ」
この状況はなんだと必死に頭で考えるライだったのだが、別に彼が特別そう言ったものが見えるという体質ではない為に、余計に困惑しているらしい。
「では」
マイクのように手を持ち上げたユーフェミアは、軽く咳払いをすると、
「まずは、夜分にお邪魔したことを謝ります。ごめんなさい。どうしても貴方にお願いしたいことがあって、此処にきました」
胸元に手を当てるしぐさで、ユーフェミアはそう言った。
「お願い?、僕にです、僕にか?」
「はい」
にっこりと頷いたユーフェミアに、ライはどうにか状況を理解しつつある意識で、ユーフェミアから話を聞くことにした。
お願いというのは難しいものではなかったが、ようやく自分を見て話しかけてくれるライに嬉しくなってか、嬉々と話すユーフェミアの話を聞くうちに、案の定睡眠時間が削られ、時折でる欠伸をかみ殺すのに意識をとられてか、ぼーとしてることが多くなっていた。
「ライ、貴方夜更かししてたの?。それとも、何か考え事していて眠れなかった」
珍しいとばかりに笑みを浮かべて、それに気づいて声をかけてきたミレイに、
「途中で目が覚めた。それだけだ」
「ふーん、それなら、生徒会の仕事一休みして、今日は早めに帰宅しておく?」
「いや、今日もいつもどおり、生徒会業務を手伝うよ」
「本当? 時折ボーとした表情してるけど」
「・・・気をつけるよ。支障は出ないように」
「ん。手伝ってくれるのは、嬉しいけど。あんまり無理しないでね。力担当はスザクと貴方が頼りだから、倒れられると困るわよ」
「ああ、わかった」
深夜、ユーフェミアの話を聞いてそれで終わったかと思われたが、昼間だというのに彼女はまだライの傍にいた。そして、今もライと同じく生徒会室へとやってきているのだが、やはり見えているのは、ライだけのようだ。
嫌でも、目に付くほど生徒会室の中を興味深そうに目の前をふらふらとうろついているのに、誰も反応しないのがその証拠だった。
それだけに留まらず、ユーフェミアと声を聞き話を交わすことが出来るのも、ライ一人だけらしい。
あの、スザクでさえも気づかなくて、ユーフェミアは寂しそうにしていたのだが、ライが声をかけると、いつもどおりに戻っていた。
生徒会業務を終えて部屋に戻ったライは、夕刻、ユーフェミアを連れて街を歩いた。
生前彼女が、行ってみたかった所を出向いて、体験するようなこと、例えばゲームセンターなどはライがやることでそれがどういうものかの見せるだけだったのだが、それでも、ユーフェミアは楽しそうに、時にはきらきらと瞳を子供のように輝かせて、笑っていた。
まだ、彼女が生きていたとしたら、もっといろんなものを見せて上げられたかもしれない、そんな思いが表情に出たのか、ユーフェミアに
「変わっていませんね。そうやって、難しい顔をするところ」
「えっ」
「ふふっ、私結構楽しんでいるんだから、それに、今はデート中でしょ?。女の子を楽しめるだけじゃなく、貴方も楽しんでみては」
「・・・わかった」
「はい。では、次のところへ案内してください」
空中に浮かぶユーフェミアが、そう言って、また一つ笑顔を見せた。当人が満足しているのならいいと思った。恋人の真似事で腕に手を絡めるその感覚が空気のように触れている感覚はあっても、其処に温かみはないとしても、時間がなくても。
夕日から黒い青へと空の色が変化していき、明かりがところどころで灯るようになる。
真昼と夕刻では、明るさにまぎれてより透明に見えるユーフェミアの姿が、夜となるとはっきりとした形となる。まるで夜の風景と、一致したように。
虫の鳴く川辺へと二人はやってきた。
もう一つ、夏の蛍が見たいという理由からだった。
青々と茂る草根から、虫の声がところどころ聞こえ始める。地へと脚を降ろしたユーフェミアは、草の中を歩いて川へと向かい、スカートのすそを上げ覗いた足先を水に浸す。波紋もなく水に溶け込み、その近くでは小さな魚達が泳いでいるのに、ユーフェミアは優しげにその光景を見下ろす。
川には、鏡のように綺麗な満月が映し出されていた。
夜空に浮かぶ満月を背景に、川の中で立つようにいるユーフェミア、風に揺らめくようにふわりと舞い上がる髪を細い手で、押さえるようにして、その風景を眺める。
透明な人物と風景がマッチして、ライには普段よりも幻想的な光景に見えた。それが消えてしまいそうなほど、儚い。
「ユフィ・・・」
ライの呼び声に、彼女が振り返る。あの優しい笑みを浮かべて。
「蛍は、此処では見られそうにないですね」
虫の声や風の音はあっても、発光するように飛び回る姿は何処にもない。 もっとも蛍のいそうな綺麗な川辺を選んだつもりなのだが、人を避けてかもしくは此処ではないどこか別のところにいるのか、それだけは、ライとて叶えられる願いではなかった。
一日限りとユーフェミアには制約があるため、遠くへ連れて行くだけの時間もなかった。
「ライ?。貴方はいろんな場所へと私を案内してくれました。それだけでも願は叶えられましたから、それに、私を見つけて話を聞いてくれた貴方に感謝はあれど、何も後悔はしておりません」
やや俯いたライに柔らかなあの声がかかると、顔を上げたライが駆け寄るようにして、川辺に濡れる事もかまわず脚を浸し、ユーフェミアへと近寄り、その存在を抱きしめた。
透明な体のユーフェミアよりも、存在が消えてしまいそうにライが小さく肩が震える。それは別れの悲しみなのだろうか、それに優しく目を細めたユーフェミアがライの背中へと両腕をまわし、あやす様に背中を撫でた。
「ごめんなさい。貴方に妙な役回りを押し付けてしまって」
肩口にそういうと、そのままライが首を横に振るので、ユーフェミアは抱きしめた腕を放して、ライと向き合った。
涙はないけれど、潤んだ瞳が気持ちを語っていて、それだけで嬉しくなって愛しくてしょうがないと言いたげに、口に笑みを浮かべたユーフェミアがチュッと音がなる程度の軽いキスを、ライの目じりに送った。
「泣かないようおまじないをしました。感謝の意味も込めて」
「ユフィ・・・僕は」
それ以上はと、人差し指をライの口元へと当て、ユーフェミアが言うのだ。
「しー、何を言うつもりかはわかりませんが、貴方のお気持ちはちゃんと届いてますから、口に出さないでください。あんまり、優しい言葉を貰ってしまったら、私が此処から帰れなくなりそうなので」
心の迷いのように揺れた銀の瞳を隠すように伏せて、黙ってライが頷くと、ユーフェミアはにっこりと笑顔を浮かべて、指先を口元から離した。
すると、ふわりふわりと小さな丸い緑の発光が何処からともなく、現れだし空中を舞って、二人のところまで一つ二つとやってくる。
「これは、蛍?」
本で見る以外、実物を見るのは初めてなライがそう呟くと、それを合図に離れたユーフェミアに目を向けると、彼女は困ったように笑っていた。
「時間が来てしまいました」
それは、これが蛍ではなく、丸い発光物質だと気づく前に、ユーフェミアの言葉に目を開いてから、
「そうか。君の周りを飛び交うこれは、蛍ではないのだな」
「はい・・・。残念ながら、迎えの灯りなんです」
「二度目だというのに、何も君に贈れなかった。それだけが少し残念だ」
「いいえ、ほんの少しのひと時でしたけど、楽しかった。この気持ちはライがくれたものです。それを大事に抱えていきます」
「すまない。本来なら、スザクにもちゃんとわけを話して、君と話す時間を与えたかったのだが」
「声を聞くことを姿も見えないことを、理解するのは難しいと思いますし、それを知っているからこそ、余計につらくなることはありますから、会って、スザクの今の姿を見られただけでも、私には十分です」
離す間も一つ二つと緑に発光する光の粒が、ユーフェミアに纏いまるで、ドレスに付くアクセサリーのように輝きながら、彼女の存在を明るく浮き立たせる。
「ユフィ、今だけ君の騎士になってもいいだろうか。君の言い残したこと、伝えたいことがあるなら、君の言葉を僕を通して伝えようと思うんだ。何かあるか?」
それに、驚いたように目を見開いたユーフェミアが、押し込んでいたものをあふれ出させるように、瞳から涙がこぼれた。
「っ!、十分だと思うのに、どうしても涙が出るんです。本当は、もっといろんなことをしたかった。もっと、お話がしたかった。スザクと会って、たくさん話をしたかった。お姉様にも、会って私は此処にいると告げたかった。それから、貴方とも、だけど・・・」
かみしめるように泣くユーフェミアに、ライは告げた。
「君が僅かな間だけど、此処にいて、僕と話したこと、今口に出したことも含めて、ちゃんと伝えると約束しよう。だから今度は、貴方が泣き止んでください。僕に全てぶつけても構いませんから」
子供のように泣いて泣いて言葉を吐き出すと、泣きはらした瞳で今度は笑って、涙を拭うと、
「ありがとう。ライ、最初に見えたのが貴方でよかった」
そうして、緑の光粒に覆いつくされるようにして、はじけるように光がきい上がると、ユーフェミアを風を運ぶように連れて行った。
残ったのは、夜の静けさと、ようやく現実の風景へと戻り止んだはずの虫の鳴き声が聞こえ始める。
ユーフェミアの最後の姿と言葉を見送って、ライはようやくまじないから開放され、雫が頬を伝っていた。
草をふみ歩く音とも、人影がライのほうへと近寄ってきた。
「ライ? こんなところにいたんだ。会長が帰りが遅いからって、僕のほうにまで連絡が来た上、随分心配してたよ。何して・・・・・ライ?」
川から上がったライは、頭から顔へと伝って雫が落ちる。それは濡らしたままで、まるで涙を拭うようにして、ライは顔を拭うと、通りすがりにスザクの肩を叩いて、
「ああ、今から帰るところだ。行こうか」
「え?、うん」
そうして、スザクと並ぶように歩いていった。彼にも話すことはある。それは帰ってからにでも、話そうとライは思った。涙は川へと全部流していったから、もう泣くことはない。ただ、ユーフェミアから預かった言葉を伝えるのが、今のライの役目であるのだから。
[留め]
真夜中、部屋の主はすぅすぅと小さな寝息を立てる中、ガチャリと開いたのは窓から、風が入り込んでカーテンをふわりと舞い上げる。
風の冷たさに肌に触れ、ベットの中で眠るライの柔らかな髪を揺らすことで、身じろぐと、不意にベットの傍らにいるはずのない人影が姿を現す。
ライと呟きながら伸ばした手は向こうが透けて見えるほど透明なのだが、人の手となった形だけは変わらず、ライに触れようとする。
温もりではなくサラリと撫でる風のような空気感に、ライの意識は夢から浮上し、現実へと戻った意識で薄く目を開いてから、瞬くように瞼を持ち上げていく。
ぼやけた視界に人影のようなものが入って、それから人影の顔が急接近した為に、ふわりと揺れる長い髪、女性であると認識したと同時に覚醒した。
驚いたように目を開いてライは凝視していると、ベットの上にいる人物は何故か可笑しそうにくすくすと笑いをこぼしていた。
外はまだ夜だとわかるとおり、室内はカーテンに仕切られて薄暗く光もないのだが、閉めたはずの窓から風が入り込んでいるし、何より驚いたのはベットの上に浮かぶようにいる女性の姿だった。
以前は人であるとわかる形で目に見えるのだが、生きている人間にはあるまじき彼女の肌や服が背中越しの風景を透けて見せるのだ。
彼女事、ユーフェミアは知り合いではあるけれど、それも死ぬ前の話であるし、此処にいるのは不自然に思った。
「ユーフェミア皇女殿下!?、何故此処に?」
「ユフィで構いませんよ。ライ。それと、また敬語に戻ってます」
生きていた頃と変わりない柔らかな笑顔を向けて、言ってきた。
「あ、ああ」
この状況はなんだと必死に頭で考えるライだったのだが、別に彼が特別そう言ったものが見えるという体質ではない為に、余計に困惑しているらしい。
「では」
マイクのように手を持ち上げたユーフェミアは、軽く咳払いをすると、
「まずは、夜分にお邪魔したことを謝ります。ごめんなさい。どうしても貴方にお願いしたいことがあって、此処にきました」
胸元に手を当てるしぐさで、ユーフェミアはそう言った。
「お願い?、僕にです、僕にか?」
「はい」
にっこりと頷いたユーフェミアに、ライはどうにか状況を理解しつつある意識で、ユーフェミアから話を聞くことにした。
お願いというのは難しいものではなかったが、ようやく自分を見て話しかけてくれるライに嬉しくなってか、嬉々と話すユーフェミアの話を聞くうちに、案の定睡眠時間が削られ、時折でる欠伸をかみ殺すのに意識をとられてか、ぼーとしてることが多くなっていた。
「ライ、貴方夜更かししてたの?。それとも、何か考え事していて眠れなかった」
珍しいとばかりに笑みを浮かべて、それに気づいて声をかけてきたミレイに、
「途中で目が覚めた。それだけだ」
「ふーん、それなら、生徒会の仕事一休みして、今日は早めに帰宅しておく?」
「いや、今日もいつもどおり、生徒会業務を手伝うよ」
「本当? 時折ボーとした表情してるけど」
「・・・気をつけるよ。支障は出ないように」
「ん。手伝ってくれるのは、嬉しいけど。あんまり無理しないでね。力担当はスザクと貴方が頼りだから、倒れられると困るわよ」
「ああ、わかった」
深夜、ユーフェミアの話を聞いてそれで終わったかと思われたが、昼間だというのに彼女はまだライの傍にいた。そして、今もライと同じく生徒会室へとやってきているのだが、やはり見えているのは、ライだけのようだ。
嫌でも、目に付くほど生徒会室の中を興味深そうに目の前をふらふらとうろついているのに、誰も反応しないのがその証拠だった。
それだけに留まらず、ユーフェミアと声を聞き話を交わすことが出来るのも、ライ一人だけらしい。
あの、スザクでさえも気づかなくて、ユーフェミアは寂しそうにしていたのだが、ライが声をかけると、いつもどおりに戻っていた。
生徒会業務を終えて部屋に戻ったライは、夕刻、ユーフェミアを連れて街を歩いた。
生前彼女が、行ってみたかった所を出向いて、体験するようなこと、例えばゲームセンターなどはライがやることでそれがどういうものかの見せるだけだったのだが、それでも、ユーフェミアは楽しそうに、時にはきらきらと瞳を子供のように輝かせて、笑っていた。
まだ、彼女が生きていたとしたら、もっといろんなものを見せて上げられたかもしれない、そんな思いが表情に出たのか、ユーフェミアに
「変わっていませんね。そうやって、難しい顔をするところ」
「えっ」
「ふふっ、私結構楽しんでいるんだから、それに、今はデート中でしょ?。女の子を楽しめるだけじゃなく、貴方も楽しんでみては」
「・・・わかった」
「はい。では、次のところへ案内してください」
空中に浮かぶユーフェミアが、そう言って、また一つ笑顔を見せた。当人が満足しているのならいいと思った。恋人の真似事で腕に手を絡めるその感覚が空気のように触れている感覚はあっても、其処に温かみはないとしても、時間がなくても。
夕日から黒い青へと空の色が変化していき、明かりがところどころで灯るようになる。
真昼と夕刻では、明るさにまぎれてより透明に見えるユーフェミアの姿が、夜となるとはっきりとした形となる。まるで夜の風景と、一致したように。
虫の鳴く川辺へと二人はやってきた。
もう一つ、夏の蛍が見たいという理由からだった。
青々と茂る草根から、虫の声がところどころ聞こえ始める。地へと脚を降ろしたユーフェミアは、草の中を歩いて川へと向かい、スカートのすそを上げ覗いた足先を水に浸す。波紋もなく水に溶け込み、その近くでは小さな魚達が泳いでいるのに、ユーフェミアは優しげにその光景を見下ろす。
川には、鏡のように綺麗な満月が映し出されていた。
夜空に浮かぶ満月を背景に、川の中で立つようにいるユーフェミア、風に揺らめくようにふわりと舞い上がる髪を細い手で、押さえるようにして、その風景を眺める。
透明な人物と風景がマッチして、ライには普段よりも幻想的な光景に見えた。それが消えてしまいそうなほど、儚い。
「ユフィ・・・」
ライの呼び声に、彼女が振り返る。あの優しい笑みを浮かべて。
「蛍は、此処では見られそうにないですね」
虫の声や風の音はあっても、発光するように飛び回る姿は何処にもない。 もっとも蛍のいそうな綺麗な川辺を選んだつもりなのだが、人を避けてかもしくは此処ではないどこか別のところにいるのか、それだけは、ライとて叶えられる願いではなかった。
一日限りとユーフェミアには制約があるため、遠くへ連れて行くだけの時間もなかった。
「ライ?。貴方はいろんな場所へと私を案内してくれました。それだけでも願は叶えられましたから、それに、私を見つけて話を聞いてくれた貴方に感謝はあれど、何も後悔はしておりません」
やや俯いたライに柔らかなあの声がかかると、顔を上げたライが駆け寄るようにして、川辺に濡れる事もかまわず脚を浸し、ユーフェミアへと近寄り、その存在を抱きしめた。
透明な体のユーフェミアよりも、存在が消えてしまいそうにライが小さく肩が震える。それは別れの悲しみなのだろうか、それに優しく目を細めたユーフェミアがライの背中へと両腕をまわし、あやす様に背中を撫でた。
「ごめんなさい。貴方に妙な役回りを押し付けてしまって」
肩口にそういうと、そのままライが首を横に振るので、ユーフェミアは抱きしめた腕を放して、ライと向き合った。
涙はないけれど、潤んだ瞳が気持ちを語っていて、それだけで嬉しくなって愛しくてしょうがないと言いたげに、口に笑みを浮かべたユーフェミアがチュッと音がなる程度の軽いキスを、ライの目じりに送った。
「泣かないようおまじないをしました。感謝の意味も込めて」
「ユフィ・・・僕は」
それ以上はと、人差し指をライの口元へと当て、ユーフェミアが言うのだ。
「しー、何を言うつもりかはわかりませんが、貴方のお気持ちはちゃんと届いてますから、口に出さないでください。あんまり、優しい言葉を貰ってしまったら、私が此処から帰れなくなりそうなので」
心の迷いのように揺れた銀の瞳を隠すように伏せて、黙ってライが頷くと、ユーフェミアはにっこりと笑顔を浮かべて、指先を口元から離した。
すると、ふわりふわりと小さな丸い緑の発光が何処からともなく、現れだし空中を舞って、二人のところまで一つ二つとやってくる。
「これは、蛍?」
本で見る以外、実物を見るのは初めてなライがそう呟くと、それを合図に離れたユーフェミアに目を向けると、彼女は困ったように笑っていた。
「時間が来てしまいました」
それは、これが蛍ではなく、丸い発光物質だと気づく前に、ユーフェミアの言葉に目を開いてから、
「そうか。君の周りを飛び交うこれは、蛍ではないのだな」
「はい・・・。残念ながら、迎えの灯りなんです」
「二度目だというのに、何も君に贈れなかった。それだけが少し残念だ」
「いいえ、ほんの少しのひと時でしたけど、楽しかった。この気持ちはライがくれたものです。それを大事に抱えていきます」
「すまない。本来なら、スザクにもちゃんとわけを話して、君と話す時間を与えたかったのだが」
「声を聞くことを姿も見えないことを、理解するのは難しいと思いますし、それを知っているからこそ、余計につらくなることはありますから、会って、スザクの今の姿を見られただけでも、私には十分です」
離す間も一つ二つと緑に発光する光の粒が、ユーフェミアに纏いまるで、ドレスに付くアクセサリーのように輝きながら、彼女の存在を明るく浮き立たせる。
「ユフィ、今だけ君の騎士になってもいいだろうか。君の言い残したこと、伝えたいことがあるなら、君の言葉を僕を通して伝えようと思うんだ。何かあるか?」
それに、驚いたように目を見開いたユーフェミアが、押し込んでいたものをあふれ出させるように、瞳から涙がこぼれた。
「っ!、十分だと思うのに、どうしても涙が出るんです。本当は、もっといろんなことをしたかった。もっと、お話がしたかった。スザクと会って、たくさん話をしたかった。お姉様にも、会って私は此処にいると告げたかった。それから、貴方とも、だけど・・・」
かみしめるように泣くユーフェミアに、ライは告げた。
「君が僅かな間だけど、此処にいて、僕と話したこと、今口に出したことも含めて、ちゃんと伝えると約束しよう。だから今度は、貴方が泣き止んでください。僕に全てぶつけても構いませんから」
子供のように泣いて泣いて言葉を吐き出すと、泣きはらした瞳で今度は笑って、涙を拭うと、
「ありがとう。ライ、最初に見えたのが貴方でよかった」
そうして、緑の光粒に覆いつくされるようにして、はじけるように光がきい上がると、ユーフェミアを風を運ぶように連れて行った。
残ったのは、夜の静けさと、ようやく現実の風景へと戻り止んだはずの虫の鳴き声が聞こえ始める。
ユーフェミアの最後の姿と言葉を見送って、ライはようやくまじないから開放され、雫が頬を伝っていた。
草をふみ歩く音とも、人影がライのほうへと近寄ってきた。
「ライ? こんなところにいたんだ。会長が帰りが遅いからって、僕のほうにまで連絡が来た上、随分心配してたよ。何して・・・・・ライ?」
川から上がったライは、頭から顔へと伝って雫が落ちる。それは濡らしたままで、まるで涙を拭うようにして、ライは顔を拭うと、通りすがりにスザクの肩を叩いて、
「ああ、今から帰るところだ。行こうか」
「え?、うん」
そうして、スザクと並ぶように歩いていった。彼にも話すことはある。それは帰ってからにでも、話そうとライは思った。涙は川へと全部流していったから、もう泣くことはない。ただ、ユーフェミアから預かった言葉を伝えるのが、今のライの役目であるのだから。
[留め]
PR
この記事にコメントする