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別プログは、テキスト中心。
主に、LCライ受けの二次創作小説と名前変換無の夢小説[銀魂おおぶりテニプリ]等を取り扱っています。
↑別プログにて ルルライ話追加しました。二次創作(コードギアスLC、君に届け、黒執事、おお振り、テニプリ、銀魂)&BLとNLのオリジナルストーリーなどまいぺーすに更新中
二人ぼっちの雨の日
いつものように、シュミレータを終了して、出てきたスザクへと、セシルが声をかけた。
「スザク君、調子の方はどう?」
「えっ、あ、大丈夫ですよ」
「そう? それならいいんだけど、今日のシュミレータでのテスト中、どこか気が集中していないところがあったから、何か心配事でもあった?」
「あ、彼の、ライの親御さんの事が、気がかりでつい考えごとをしていました」
「ライ君が、まだ親御さん見つかっていないのね」
「はい」
「そう。それで、わたしが話しかけても身が入ってなかったのね」
「すみません。集中しないといけないときに」
「ううん、私も間違えれたとはいえ、ちょっと心配だったのよ」
「彼のためにも、早く見つかるといいんですけどね。此処は、彼の知る場所ではありませんし、不安があると」
話の途中、扉へと視線を向けたスザクに、セシルが問いかけた。
「どうしたの?」
「いえ、今扉の向こうに物音がしたような気が」
「? 誰もいないみたいだけど、あら?」
セシルが物音を確かめに、扉へと出て行くと、誰もいなくて、空を見上げたセシルにつられて、スザクも見上げる。
「あ」
曇った空から、雨がポツリポツリと降って地面を濡らしていく。
「あら、雨降ってたのね。気づかなかったけど」
セシルに答えるよりもスザクの視線があるものを捕らえた。
「スザク君、帰りは、あら? こんなところに傘。誰の物かしら?」
そこには、扉の横に立てかけられるように置いてあった傘があった。スザクが来たときは何もなかったのは知ってるそれが、まるで誰かが置いていった後のように。なんて事のないそれが何故か印象的で、スザクの脳裏に残っていた。違和感と共に。
帰り道、雨は止むこともなかったので、傘を持ってこなかったスザクは、セシルから借りることもなく、立てかけられたあの傘をさして歩いていた。そのとき、ポケットに入ってた携帯のバイブが振動して、電話に出ると、受話器からミレイの声を耳にした。
「あ、スザク君、ちょうど良かった。今、貴方どこにいるの?」
「え、今ですか?。今は、帰る途中なんですけど」
「帰る途中、ねぇ、帰る前でもいいんだけど、そっちにライ君見かけなかった?」
「え」
そのまま立ち止まるスザクの様子に気づくこともなく、ミレイの話は続く。
「傘が一つなくなってたから、出かけたんだと思うんだけど、行く場所って言ったら、スザク君のところだろうと思ってかけてみたんだけど、そっちに来てないのかしら」
脳裏に、扉の横に添えられた置き去りの傘と、セシルと話していたときにふと感じた視線がスザクの脳内の中で何かと繋がった。
あれは、ライで、二人の話を聞いていたのではないかと。
「・・・っ」
「貴方のところに行ってないのなら、別もあたってみることにするけど、もしそっちで見かけたのなら、こっちに連絡を頂戴」
「まだ帰ってはないんですか」
「一応、クラブハウス内でも、探しまわってみたけど、まだ帰ってきてないのよ。保護してるとはいえ、あの子、此処ではまだ一人でしょ?。だから、その不安があるのよ。何かあるのかも知れないけど、一人でどこかに行ってしまわないように、捕まえといて、こっちも手配して探すから、お願いね」
忙しなくそう言って途絶えた電話口から、ツーツーと回線の切れた音はスザクの耳から離れていた。スザクは、呆然とミレイの言葉を聞いたまま、呟いていた。
「ライ」
確証はなかったが、スザクとセシルの会話をもし聞いていたとして、小さなライがこれ以上はいられないと離れるきっかけを自分が作ってしまったと思うといたたまれなくなった。それで、一人で探しに出たんだと、すれば、住み慣れない場所で何かあったとすれば、自分のせいでもあるのだから、スザクにも不安がよぎる。それを暗示させる様に、遠くで雲が光った。
傘も差さず、雨の中を駆けていく小さな存在。
だが、雨で足を取られたのか、おもっきり水たまりのある濡れた地面の上を滑るようにして、こけたライに雨は容赦なく振り注ぐ。
誰の手も借りることなく立ち上がると、僅かに痛みを覚えたように表情をゆがめながらも、歩みを止めなかった。
スザクが考えるに、ゲットーへライは向かったわけでなく、公園に来ていた。
余所の世界から突然此処に来たライは、見ず知らずの大きな人たちに囲まれても、環境が違っていても、不安はあったけれど希望は持っていた。
それが、顔と名前が同じの特派の人達だった。
自分の知るスザクも、自分よりも大きく成長したその姿は違うけれど、それでも共通するところがあったことが、小さなライには親近感を覚えていたのだ。
それも、最初で全て否定されてしまった。
見つけた人は、確かに、顔も名前も同じなのに、服装は見たことのない格好で、しかも、赤の他人と大した態度で接してくる。
そのことが、ライの心に小さな波紋となり、寂しさを募らせていく上、より、距離を置くように他人行儀になっていた。
息をついたその頭は、雨ざらしにされたまま、雨粒が額から流れて、目じりさえも伝って、まるで泣いてるようにも見える。
遊具の下に隠れた地面に、雨で重みを増した水滴が何度もこぼれておちる。雨を含んだ服が身体に張り付く冷たさと湿気を含んだ外気が空気の重みを増して、身体に振るえをもたらし、膝を抱えるようにして寒さを紛らわす。
転んだときに出来た膝のすりぬいた痕とその時にひねったらしい足首が赤みを浮き上がらせ、動かすように触れてみると痛みを作る。
また、迷子になっては困ると言うのと危ないこともあって、学園の外には、あまり出歩くことがなかっただけに、飛び出した外の世界は、見たことない街並や建物や乗り物、見たことのない格好の人達、それらが、此処は自分のいた場所でないと思い知らされる。
いや、知っていたことを、改めて認識されるのだ。此処は、別の世界で、自分の居場所はないのだと。
雨が止むまでの間、ライは遊具の下に身を隠すように、じっとするしかなかった。雨が止んだとしても、もう、あそこに戻るつもりはなかった。
一時的に保護してもらい、親御さんも探してもらってはいるが、この世界の住人ではないライには、それは意味のない事だとわかっていた。
今サラダと思うかもしれないが、離れるのなら今しかないと思った。
一人でどうにかなるとも思ってもいないし、無謀だと頭でわかってはいても、変える手段を探すには、自分で動くしかないと判断したからだった。
それに、スザク達に多少甘えがあって、留まっていただけで、其処に居続ける理由は自分にはないのだから。
「ライ」
冷たさが身体を冷やしていくように、疲れたのかぼんやりと見ていた瞳が、重さを増して、うつらうつらと瞼を下ろしそうになっていた時。
雨の中、呼ばれた声を聞いて、ぼやけた視界に映ったのは、誰かの足で、見上げると傘をさした影の姿、それが一瞬で、公園の明かりに照らされて誰くらいは認識はできた。
迎えが来るとは思ってもなく、そして、自分を見つけてくれたその人が、自分の知るスザクと同じ人だったことに、ライの瞳が驚きに見開く。
「何してたの。こんなとこで」(何しているんだよ。お前)
幻聴にも聞こえた声が、スザクの声と、今の大きなスザクと重なって、
「心配してたよ。生徒会の皆も君の事探しているって聞いて」
幻聴と幻像がスザクの言葉を聴くうちに途切れ、自分よりも背の高い目の前にいるスザクしか残らなくなる。そのことに寂しさを覚えたように、唇をかむようにして、顔をうつむかせると、ライの顔が、雨に濡れて張り付いた前髪に隠れてしまった。
突然、いなくなってしまったというのに、スザクは怒らなかった。何処かへ一人で遠くに行く前に見つけたことに、安堵して忘れていただけかもしれないが、いなくなろうとしていたライには、居心地の悪いものとなった。
そして、決断した考えを変えられそうで、怖くなったのもあった。
差し出した手を今更素直に受けいられる自信がなかったのだ。
「ごめん。不安にさせたみたいだね」
顔を上げようとしないライが、話を聞いたせいで意固地となり、戻りたくはないと子供らしくない虚勢を張ったその姿が、寂しげで、このまま置き去りにすることを躊躇わせる。そうするつもりもないけれど、どうしたら伝わるだろうかと考えて、スザクはライと目線を同じにするように膝を曲げて、優しく語りかけるように言った。
「突然出て行った理由は聞かないけど」
それで、ようやく顔を上げたライに、笑いかけて。
「帰ろう。僕と一緒に」
「ライ、一緒に帰ろうぜ」っと、自分の知るスザクが手をさし伸ばす姿と今のスザクとが重なって、違うけれど其処が同じでライは泣きそうになった。
「っ!」
ライが僅かに動いたときに、赤みをさして示す傷跡を見つけたスザクが、
「足、赤くなってるけど、もしかして、捻った?」
肌や髪、それに服までつく泥の跡で、転んだことまで明確で、誤魔化すこともできず、ライは小さく頷いた。
そうかと呟いたスザクが立ち上がって傘を傾けると、其処から立ち去るわけでなく、今度は、背中を向けてしゃがみこんだ。
「ほら、掴りなよ。無理して歩くと、悪化するからね」
スザクが大きな背を向けると、ライに断る術は、微笑むスザクの表情から見ても、見つからず、躊躇しながらも、小さな手が伸びて、その背におぶさった。
泥で汚れることも気にせずライをおぶったまま立ち上がりながら、傾けた傘を元に戻した。傘をさすのと同時に人を背負うなんて事は、あまりなかった為、抱えるのに不慣れなところはあるのだけど、降ろそうとは思わなかった。それどころか、雨で濡れる肌と、それを通して、わかる子供特有の温もりと重みに、スザクは懐かしそうに、目を細めた。
歩いて行くと、微かな泣き声が聞こえはじめた。
それは、背中越しからなのだと、握りしめたちいさな手が、服越しに震えていることも伝わって、嗚咽が顔をうずめた服に埋もれて、聞こえてくるのだ。
出会ったころのライのように、子供らしくなく大人びていて、感情という感情を秘めているように無表情だったけど、やっぱり、不安はあったのだったのだろう、それを慰めようとして、スザクから口を開いた。
「傘、君が届けにきてくれたんだよね。だから、こうして濡れずにすんだよ。ありがとう」
「っ、うっ」
宥めるどころか、泣き声を助長させてしまったけれど、今までずっと我慢していたのだとしたら、涙と共に吐き出して欲しかった。服に顔をうずめて隠すくらい泣き顔を見せたくないのだとしたら、せめて泣き止むまでの間、ゆっくりとしたペースで、スザクは歩いて行った。
雨と涙で濡れた顔は、温かみを覚えたようにスザクの服を握り締めたまま、顔を寄せたライの頬には朱をさしていた。
冷えた肌に暖かさを取り戻したように。
涙を流し続けていく代わりに、心は酷く温まり、忘れたはずの安心感を覚えさせて、瞼を閉ざすのだった。
嗚咽の代わりに、今度は小さな寝息を背中越しにスザクは聞くことになる。
[留め]